現象の奥へ

【本】『フーコー入門 (ちくま新書)』──フーコーのテクストとはなんの関係もない(★)

フーコー入門 (ちくま新書)』(中山元著、1996/6/1刊、筑摩書房

フーコーの「処女作」は、精神科医ビンズワンガーの翻訳及び、著書の、本文より長い序文である。カントの人間学から、文献学へと進んでいったフーコーは、なにより、ドイツ語に通じる哲学者だった。そして、志半ばで死んでしまった。おそらく、彼の「描こうとした」ものは、「夢の論理」のようなものである。それは、もしかしたら、フロイトの『夢判断』とどこか通じるところがあるかもしれない。フロイトを、もっと精緻に、人間的に、テクスト中心的にしたのがフーコーと言える。そういう哲学者には、「大系」も、「入門」も、「わかる」ということも意味がない。それをまったく、知ってか知らずか、「わかりやすく解説」しようとの試みがありありで、しかも、「今を生きるためのツール」化しようとしている本書は、どう見ても、フーコーのテクストとはなんの関係もない。

 

 

フーコー入門 (ちくま新書)

フーコー入門 (ちくま新書)