現象の奥へ

【本】『読書実録』──テクストの喜びゼロ(★)

『読書実録』(保坂和志 著、2019/9/26、河出書房新社

たとえば、カフカの日記は、普通ならこぼれてしまうような行間を拾って、どこまでも興味は尽きないが、保坂和志も、カフカに習っているようだが、結果はまったく見当違いとなって失望させられた経験がある。「行間をまたいで」いるような印象である(笑)。毎回鳴り物入りの試みの作品であるが、今回は、こと文学を志すものなら、明治以来、いや、江戸時代から、いや、それ以前から、誰もが当たり前に行ってきた「筆写」に目覚めたそうである。あら、そうですか(笑)。それはそれで興味深いものであるが、一読がっかり、筆写しているテクストが……なんちゅーか、あまり興味をそそられない。テクストの誘惑がゼロである(笑)。その顛末を、あれこれ、毎度のように散文にしている。もはや、河出書房新社ですか(笑)。
 ちなみに、保坂の「師」、小島信夫の長い小説『別れる理由』も、だらだら……「だけ」。テクストの喜びゼロ。似たもの同士というべきか。なんで、大御所(?)を「師」なんて仰ぐのだろうか? ほかの組み合わせも知っているが、ここでは言わずにおかう。

 

読書実録

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