現象の奥へ

Entries from 2020-02-01 to 1 month

【詩】「父に捧げるソネット」

「父に捧げるソネット」 ヤルタで巻かれた百韻の愛宕よりはあからさまでなけれど北昏ければ寺山のその故郷にも馬は鼻向けず子は裸父(てて)はてゝれで遠州の谷川ゆけば鮎が呼ぶとも食いすれどプーチンは算盤はじいてサンダースすでに捨てたるパンデミック日…

数日前のあっさり夕食

豚バラの塩煮ほか。

『政治という虚構──ハイデガー芸術そして政治』フィリップ・ラクー=ラバルト

『政治という虚構──ハイデガー芸術そして政治』フィリップ・ラクー=ラバルト(浅利誠、大谷尚文訳、藤原書店、1992年刊) 原書は、1988年刊、国家博士号のための補助テキスト。本論は、それほど長くないが、本書が出版される直前に出た、ファリアスの『ハイ…

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン 』──素直に賞賛すべき(★★★★★)

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン 』(タイラー・ニルソン マイケル・シュワルツ 監督、2019年、原題『THE PEANUT BUTTER FALCON』) ダウン症という「病気」に大いなる誤解があるようだ。ダウン症はいわゆる「知的障害」ではない。染色体異常によって、…

『名もなき生涯』──「作家性」とは、「文体」を持っているかどうか(★★★★★)

『名もなき生涯』(テレンス・マリック監督、 2019年、原題『A HIDDEN LIFE』) 「作家性」なる言葉をやたら振り回している御仁を見かけるが、ほんまに意味がわかってるのかね(笑)? 「作家性」とは、この、テレンス・マリックみたいな監督にこそふさわし…

【詩】「Noche oscura del alma (魂の暗い夜)」

「Noche oscura del alma (魂の暗い夜)」 For me, it's bestと彼は姿むくつけき貝を指して言った。名前は知らないが、北極海で採れた貝新鮮な貝味わってみれば小味で深いうまみのある貝一見居酒屋風ながら内実はそれなりの価格のレストランであった詩は翻…

【詩】「青」

「青」 影を追えば気配の追憶の黒であり断念の清潔さよりも嫉妬のぬくもりを希求し曲がっていく鉄のような角度で降りしきるものがあり永遠よりも燃えているものがある森らしきもの彩度明度彩度明度再度冥途の飛脚となり緑よりも死から遠いものそれは青

『容疑者、ホアキン・フェニックス』──クサい物語回避の知的作品(★★★★★)

『容疑者、ホアキン・フェニックス』 (ケイシー・アフレック監督、2010年、原題『I'M STILL HERE』) そう、確かに、10年ほど前、ホアキン・フェニックスが俳優を引退するという「ニュース」が、マジでマスコミを駆け巡った。その「真偽」が本作だった。当時…

【詩】「『アスパンの恋文』」

「『アスパンの恋文』」 『アスパンの恋文』というヘンリー・ジェームズの作品は奇妙な味わいの小説であるもっともヘンリー・ジェームズの作品はたいてい奇妙な味わいである このT.S.エリオットと同じようにアメリカを捨てたアメリカ人舞台で好んだイタ…

【詩】「Purgatorio」

「Purgatorio」 Cant Primo Per correr miglior acqua alza le vele omai la navicella del mio ingegno, che lascia dietro a sé mar si crudele; Tell me, muse, of the anger of Achilles,An angry man, that is my subject ira furor brevis怒りはつかの…

映画『1917』の嘘

映画『1917』で、担架で負傷者を運びシーンが、「いかにも戦場らしく見せかけられていたが」、実はこの大戦の悲惨さのひとつに、負傷兵を運ぶ場所が廃止されていた、というのがある。つまり、怪我人も死人も、放置せざるを得ないほど、戦局が切羽詰まってい…

 『1917 命をかけた伝令 』──第一次大戦の悲惨さはこんなものではない(★★★)

『1917 命をかけた伝令 』(サム・メンデス監督、2019年、原題『1917』)(ネタバレ) 第一次世界大戦がいったいどのような戦争だったのか、ほとんどの人が知らない。で、私は常々、それに関心を持っていたので、『仏独共同通史 第一次世界大戦 上下』(岩波…

【詩】「をじさま、お早うございます。と、金魚が言う」

「をじさま、お早うございます。と、金魚が言う」 小さい花にくちづけをしたら、小さい声でぼくに言ったよ、おじさんあなたは、やさしいひとね、なんて歌があったが、金魚が口をきいたのだから驚いた。天はまだ朝ではなく隠喩が星のように私を見下ろしている…

【詩】「ヤマシタハルヨ(そのヒトだれ?(笑))の『ドン・キホーテ』」2

「ヤマシタハルヨ(そのヒトだれ?(笑))の『ドン・キホーテ』」2 いま(2020年あたり)では、ジーサン、バーサン、こぞって使っている「ネット」、インターネットですが、その始まりは、軍事用のアルパネットというものでした。その後、科学の研究用に使…

『ロリータ』

ウラジミール・ナボコフの『ロリータ』は、日本でいえば、二見書房のようなポルノの出版社から出たが、きわめて文学的な作品である。いまそれを、ジェレミー・アイアンズの朗読(オーディオブック)で聴いている。彼のかすれた声、俳優として、とてもいい声…

【昔のレビューをもう一度】『母なる証明』 ──韓国の手触り(★★★★)

● ポン・ジュノ監督、『パラサイト』 祝! アカデミー賞 監督賞+作品賞● すでに国際的な仕事をしていたジュノ監督なので、アジア人とはいえ、当然の流れなのかも。本作より、『スノーピアサー』(クリス・エヴァンスがかっこいい)の方が私は好みで、高く評…

けふのおやつと「てー」(本名、ていか(定家)、ボーダーコリー(♀、1歳7ヶ月)

【けふのおやつ】全粒粉入りスコーン。あんこと生クリームを挟んで。長尾智子さんのレシピです。 ついでに、「今日のてー」。もともとは、ウェールズ原産のわんこらしいので、イギリスモノには目がない?

『キャッツ』──驚異の前衛詩のエンタメ化(★★★★★)

『キャッツ』(トム・フーバー監督、 2019年、原題『CATS』) もともとは、T.S.エリオットの「詩集」、"Old Possum's Book of Practical Cats"(『お役立ち猫たちのフクロネズミ爺さんの本』)を、「ミージカル化」したもので、歌詞はほとんど、エリオットの…

【詩】「追憶の猫たち」

「追憶の猫たち」 最初に現れる猫は三河一宮の祖母の家の白黒猫で名前をチーとか言ったようなすでに襖と同化しているような姿かたちの美しい猫で鳴いた声も記憶にない次に現れる猫は「ちいねえ」という駄菓子屋のお決まり通り店先の火鉢のそばに座っていた猫…

【Foucault memo】 (2020/2/5)

【Foucault memo】 (2020/2/5)1954年(28歳) Introduction in Binswanger “Le Rêve et l’Existence”……Aujourd’hui, ces lignes d’introduction n’ont guère qu’un propos : présenter une forme d’analyse dont le projet n’est pas d’être une philosoph…

【詩】「その一枚のアルトー」

「その一枚のアルトー」 夢の壁を越えられなくてこちら側で問いを解く微かな暗がりが記憶の影と繋がるとき低く濁った声が聞こえたものだLo ・Li・Ta取り乱した男やもめの証拠物件ガウンをはだけた元貴族 そう称号は売ってしまったここはもう地球でさえなく …