現象の奥へ

Entries from 2020-09-01 to 1 month

【詩】「張込み」

「張込み」 大岡昇平は、歴史を歪めていると、松本清張を批判している。なるほど、それは、正当な立場と言える。だが、クリスマスイヴの凍える街で足踏みしながらカップコーヒーを啜って仕事中の、その雄々しい惨めさ、あるいは、惨めなプライドをどこへと繋…

山下晴代第十詩集『鴉』

芭蕉とポーを結ぶ鴉。密室で悪夢と戯れよう。Stay home ! 山下晴代第10詩集『鴉』ご注文はこちらへ↓ https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=1038610120 上記が不都合、ご質問などはこちらへ↓ rukibo@mars.dti.ne.jp

『ファナティック ハリウッドの狂愛者 』──センスはよいがリアリティがないのが致命的(★★★)(ネタバレ)

『ファナティック ハリウッドの狂愛者 』(フレッド・ダースト監督、2019年、原題『THE FANATIC』)(2020/9/23@KBCシネマ福岡) 役者で観る映画がある。トム・ハンクス、ダイアン・キートン、ジョン・トラボルタ……などなど。彼らが出るといえば、とりあ…

【短編を読む】「芝居がはねて」チェーホフ

【短編を読む】「芝居がはねて」チェーホフ、松下裕訳(チェーホフ全集(筑摩書房)第6巻所収、翻訳原稿にして約10枚) 母とともに「エヴゲーニー・オネーギン」の舞台を観た16歳の少女が、芝居の中の少女に影響されて、自室に戻って、衝動的に手紙を書…

【短編を読む】「ミイラとの論争」エドガー・アラン・ポー

【短編を読む】「ミイラとの論争」エドガー・アラン・ポー(翻訳原稿にして400字詰め40枚くらい) はじめ、「ミイラとの戦争」と読んでしまった。はたして、どんな戦争だろう? と思ったが、「論争」であった。少し面白くなくなったが、まあ、読み進んでみよ…

『TENET テネット 』──真の作家(★★★★★)

『TENET テネット 』(クリストファー・ノーラン監督、2020年、原題『TENET』)(2020/09/18@ユナイテッドシネマ、キャナルシティ13) これが時間のループなら、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』である。日本人の漫画を映画化したあの作品は、斬新であ…

【同人誌『妃』22号、2020.09】

【同人誌『妃』22号、2020.09】 装丁が美しい。「一番高貴な詩の雑誌」がコピーである。自分で言うか(笑)?と思ったが、同人誌の名前はおろそかにできない。私は、二十代前半、誘われて、『グッドバイ』なる同人誌に入ったが、ぬあんと、それらの同人のう…

【旅の思い出、ニューヨーク】

【旅の思い出、ニューヨーク】 2001.9.11から5年後、2006年1月、貿易センタービル跡地の、「グラウンドゼロ」を訪れた。まだそこは、更地で、泥水が溜まっていた。広さは、ちょっとした街1個分に相当するかと思われた。新しい建物に向け工事中で、平地は、…

【旅の思い出、フィレンツェ」

【旅の思い出、フィレンツェ】2012年11月、『イタリア古寺巡礼』の和辻哲郎のあとを追って(?)、フィレンツェは、アルノ河岸のホテルに滞在した。この河は、 ダヴィンチ村から出てきた、レオナルドが洗濯したり(笑)、ダンテも親しんだ河で、歴史上のさま…

『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』──沈黙と測りあう音を探して(★★★★★)

『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』(マウロ・リマ監督、 2017年、原題『JOAO, O MAESTRO』) 画家の梅原龍三郎と一年、鎌倉の旅館で生活をともにした小林秀雄は、「一流の芸術家には、徹底したものがある」と、講演のCDで言っているのを何度も聞いたが、…

【詩】「そしてプルースト」

「そしてプルースト」 プルーストが失ったものと引き換えに得たのはシーニュだとしつこく書いたジル・ドゥルーズは、自分の体を自分では思うように動かせない病に罹って、それでは生きている意味がないと、どうにか車椅子だったかで、病室の窓まで移動して、…

【詩】「鴉、あるいは、リゾーム」

「鴉、あるいは、リゾーム」 この、と、あえて言えば、いわゆる「コロナ禍」は、ジャレド・ダイヤモンドの指摘のように、野生動物の家畜化によって、 起こるべくして起こった。つまり、 野生動物を食べることによって。しかし、リゾームは そんな物語さえ一…

妹、小林貴子個展のお知らせ

妹、小林貴子個展のお知らせ。 2020/10/1〜10/6 愛知県豊橋市、ギャラリーNAKA http://www006.upp.so-net.ne.jp/soshite/index.html

【詩】「恐怖という名のアレゴリー」

「恐怖という名のアレゴリー」 私がこれまで読んだ最も恐ろしい物語は ヘンリー・ジェームズの「友だちの友だち」という短編で、個人名はいっさい出てこない。話者が友だちともうひとりの友だちを会わせる話で……いやちがう、話者の知人が書いていた話で、会…

【詩】「きょう、私はきみのことを考える」

「きょう、私はきみのことを考える。」 あの場所。 草が生えていて ドブ川があって 田んぼもあって 記憶のなかのあの場所のことを思う。 それがどんな意味なのか? 生まれてしまったから この地に だからきみの記憶に住み着いた 保育園にいき 生まれてはじめ…

『幸せへのまわり道 』──ハンクスいぶし銀の演技(★★★★★)

『幸せへのまわり道』( マリエル・ヘラー監督、2019年、原題『A BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD』) 模型の列車や町並みから始まるオープニングがなんともまだるっこしい。続いて登場の、子供番組の人気者、フレッド・ロジャースを演じるトム・ハンクス…