現象の奥へ

Entries from 2022-02-01 to 1 month

【詩】「ヘレナ」

「ヘレナ」 絶世の美女というものがあったら、 それは、伝説、を呑み込まねばならないだろう。 その女のために戦争が起こり、 彼女を奪った王子は、トロイアのパリス。 ごめんなさい、私が思い出させるのは、 劇団『四季』の影まりえ、それから、ダイアン・…

『ナイル殺人事件』──なんら新しいものなし+二流以下俳優たち(★)

『ナイル殺人事件』(ケネス・ブラナー監督、2022年、原題『DEATH ON THE NILE』 前作の『オリエント急行殺人事件』は、まだ見られたが、今回「調子に乗って」(?)作ったのか、まったく面白味なし、新鮮味なし、おまけに魅力的な俳優ゼロ。あのアーミー・…

【詩】「愛」

「愛」 濫用されることによって意味を失う事態となろうとも、 実際に愛とか死とか夢というものがなくなるわけではないと、 いうようなことを吉田健一は書いている。 われ(吉田健一は対談の時に自分のことをこう言うが、 私もならって)も、そのエッセイ集、…

『現代詩手帖2021年五月号』Amazonレビュー8回削除記念(笑)

『現代詩手帖2021年五月号』Amazonレビュー8回削除記念(笑) このところ「静か」だと思っていたが、『現代詩手帖2021年五月号』のAmazonレビューがまた削除されていた。当方も、これ以後の号に関しては、関心ないので、言及していません。この号が決定版で…

【詩】「Billy Collins」

「Billy Collins」 忘れられし時の石甕の中、わが愛は眠る。 そは巫女の形をして、蜥蜴に守られぬ。 夢とうつつの間の眠る瞬間、そは赤き舌を出しぬ。 アメリカ最大の詩人、ビリー・コリンズの、 The Trouble with poetryを読みつつ一日を過ごす至福 を感謝…

【詩】「角兵衛獅子のうた」

「角兵衛獅子のうた」 きょうもきょうとて〜♪ みたいな歌詞だったか。 美空ひばりの歌う、角兵衛獅子のうた。 白黒映画で見たような気もする角兵衛獅子。 いまは死語になってしまった。 第一、児童虐待でしょ? 志賀直哉の『暗夜行路』だったか、父親に棒に…

【詩】「荻生徂徠」

「荻生徂徠」 主君の仇を討った、赤穂の浪人たちに、江戸の街の人々は喝采を送った。 このテロリストたちを無罪放免にすべきだ、という意見もあった。 浪人たちは主君の菩提寺である高輪泉岳寺に身柄を預けられていた。 浅野内匠頭を、即日切腹させたのは徳…

【詩】「adornoの『mahler』」

「adornoの『mahler』」 音楽にウルサイ、とてもウルサイ、アドルノが、マーラーについて書いている本は、 正直言って、なにが書いてあるかわからない。 ただマーラーの交響曲は、ヴィスコンティの『ベニスに死す』や、 市川崑の『四十七人の刺客』のあいだ…

【詩】「William Blake」

「William Blake」 天国のなかに地獄のティールームをつくるもの、 妖精を堕落させ、韻を脳髄のどこか深いところに隠すもの、 赤ん坊とか涙とか娼婦とか虐待とか、 宇宙の忘れ物を届けるもの、 誠実さでひとを不快にさせ、不愉快さで歴史に残る。 この裸の、…

【詩】「あるいは裏切りという名の犬」

「あるいは裏切りという名の犬」 「36(トロントシス)」というのがパリ警視庁の通称、36 QUAI DES ORFEVRES という住所だから。 「まだ」十分痩せている、ジェラール・ドゥパルデューと、 醜男だけど、フレンチの匂い漂う、ダニエル・オートュイユが、 かつ…

『ウエスト・サイド・ストーリー』──「こいつ映画がわかってやがる」(★★★★★)

『ウエスト・サイド・ストーリー』(スティーブン・スピルバーグ監督、2022年、原題『WEST SIDE STORY』) 「こいつ映画がわかってやがる」。NYで初めて、不本意ながら、スピルバーグのデビュー作『激突』を見させられた、淀川長治の台詞である。スピルバー…

【詩】「高木先生」

「高木先生」 うちはビンボーだったのに、母は私が小学一年になったら、絵を習いにいかせた。 小学生には遠い、豊橋駅を右手に左にまがって雑居ビルのなかにある文化ルームという、おそらく市が主催していたいまでいう「カルチャー」に徒歩で通った。 その講…

【詩】「時計じかけのオレンジ」

「時計じかけのオレンジ2」 じたいは「時計じかけのオレンジ」だと、 『ユーラシアニズム』という本の著者が書いていた箇所があって、 ハッと思った、ので、詩の題名にした。 これはアメリカ人ジャーナリストが、 プーチンの野望について分析した本で、邦訳…

『ドライブ・マイ・カー』──どこが面白いのかわからない(★)

『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督、2021年、英語題名『DRIVE MY CAR』) (昨年観て、Yahoo!映画にレビューを投稿したところ、削除されていた。理由を推測すると、村上春樹が作中よく使う事柄で本作でも使われていた(くせに)、「フェラチオ」という…

【詩】「時計じかけのオレンジ」

「時計じかけのオレンジ」 KGB出身者は市民にもイメージが悪いが、 さいわいなことにトップまでは行かなかった。 代わりに、秘密警察のトップになった。 秘密警察は教会の裏に隠れている。 忠実であることはなによりで、市民の信頼も厚い。 市民とは中流以上…

【詩】「柳」

「柳」 うちはお茶屋で、玄関先に茶箱とその上に計りをおいて、お茶を商っていました。 父母は勤めており、父母が留守のときは、 小学生の私がもっぱらお茶を量り売りしていました。 お茶屋をやったのは、父の実家でお茶を製造していたからです。 「川柳」と…

【詩】「イリアス」

「イリアス」 歌ってくれムーサたちよ、 てな感じで出かけた戦争は、美女を取り返す目的ではなくて、 あらゆる戦争と同じ、略奪だった。 牛を連れ葡萄酒を持ち、 戦地に下りたっても、まずは、神に焼き肉と葡萄酒を捧げ、 兵士たちも喰らうのだった。ああ、…

【詩】「T.S.エリオット」

「T.S.エリオット」 長いあいだ、T.S.エリオットの肉声を聴き続けている。 氏が朗読するCDをiTuneアプリに入れて、何代ものデバイスで聞き続けた。だから、 そらでも、氏の声を再現することができる。 『荒地』という詩集は、日本ではかなり誤解されている、…

『355』──男がイマイチ(★★★★)

『355』(サイモン・キンバーグ監督、2022年、原題『THE 355』) アクションとしては悪くないが、「女スパイ」(「なりゆきスパイ」のコロンビア人のセラピスト、ペネロペ・クルスも含めて)たちが全員、政府筋のスパイであるところが、やや時代からズレ…

【詩】「久女」

「久女」 杉田久女が、立子の独楽と落葉の連作五句を論じている。 独楽を持って寺の境内を上ってくる子どもたちの姿を、 映画のように次々移り変わる五句を、まさに、 映画のようであることを気づかせるように解説している。 そこで私も独楽で遊んだことを思…

【詩】「たゆたって」

「たゆたって」 石川淳「西游日録」は、文学者仲間、 安部公房、江川卓、木村浩と、 パリへ行っててんやわんやの旅行記だが、 ホテルに着いたら失敬なフランス人の若者が部屋に入り込んで勝手にシャワーを使っていた。 そんなエピソードも達筆な書きっぷりに…

【詩】「遺書」

「遺書」 遺書といって思い浮かべるのは、 服毒自殺をした芥川龍之介の枕元にあった遺書である。 自分の全集は岩波から出してください。 とおねだりばかりで、肝心の妻へは、自分の死後の事務的な処理の依頼。 死んだのは、ある夫人と恋仲になり、いろいろ追…