現象の奥へ

Entries from 2022-09-01 to 1 month

たまたまの吉増剛造詩集

「たまたまの吉増剛造詩集」 「吉増剛造詩集」全五巻のうち、たまたま本棚にあった二巻、『黄金詩編』(1964-1969)と、『わが悪魔払い』(1972-1973)。この二冊は、できが全然ちがう。あとの方がひどすぎる。ことほどさように、この詩人は劣化してきた? …

「別れ、あるいはカルヴィーノの黄昏」

「別れ、あるいはカルヴィーノの黄昏」 「黄昏が別れをためらわせた」とボルヘスは書く。 遠く近い砂漠の、 Duneと呼ばれたその星の天上では、 イタロ・カルヴィーノが月までの距離を測っていた。 ボルヘスが測っていたのは森の昏さで、 今宵、いろいろな言…

「見世物」

「見世物」三河一宮の砥鹿神社のお祭りにはいつも見世物小屋がたって、ものものしい看板が観客を驚きの国へと連れて行く。大学病院の白衣を着た医師と看護婦が驚きの表情をしている絵。一つ目の赤ん坊。その異形にどんな論理も法律も摂理も持ち込まれない。…

【昔のレビューをもう一度】ゴダールの『アルファヴィル』(1965年)

ゴダールの『アルファヴィル』(1965年) 『ALPHAVILLE』(Jean-Luc Godard, 1965) 「続編」の、「新ドイツ零年」の方が有名だと思われる、もとになったフィルムだが、もともとハードボイルドスターの、エディー・コンスタンスが、地球外の星のアルファヴィ…

R.I.P Godard

『ゴダールがキャメラを向ければレマン湖のほとりの平和な光景はあらゆる物語の舞台装置へと変容してしまう。──『ゴダールの決別』(蓮實重彥『映画狂人日記』P150) 原題『Hélas Pour Moi!』 日本語で言えば、 ああーなんてこった! みたいなものか。まだ、…

倫敦塔

「倫敦塔」漱石のエッセイ、『倫敦塔』を読み、そこが拷問室であったことを知り、見にいった(地下鉄(チューブ)の端っこ)が、すでに入室可能時間は終わり、なにかの祝典で、パディントンの明かりが取り巻いていた。2013年11月のことだった。私にとって、…

【【昔のレビューをもう一度】「クィーン」

【昔のレビューをもう一度】2007年4月14日公開『クィーン』THE QUEEN104分2007年4月14日公開「Dignity(気品)」 本作を観ると、「立憲君主制」とは、いかなることか、よくわかる。その点、わが国も、同政体をとっているのだが、果たして、ほんとうの立憲君…

【詩】「船旅」

「船旅」「海は無数の剣であり、満ち足りた貧困である」とボルヘスが書いたとき、アシェンバハは船からすれ違うべつの船を見ていた。豪華客船であり、甲板で船客たちが彼に向かって手を振っていた。なかでも、派手な作りの男、顔を白塗りにして口紅を塗り、…

【誰でも知っているが、ネットで恥をかいているアナタのためのカブキのレキシ】

【誰でも知っているが、ネットで恥をかいているアナタのためのカブキのレキシ】 歌舞伎の芸は、親が名優で、家が名門でなければ、「奥義」のようなものは伝授されず、役も、いい役が取れない。三歳ぐらいから、「花伝書」のような、訓練をしなければならい。…

「源氏物語」

「源氏物語」この時代、紙は貴重なり。ゆえにパトロンがいる。パトロンは、「教え子」中宮彰子の父、藤原道長なり。全巻中、雲隠という章は題名のみ。はて。雲隠の章は紛失す。宣長だったか。それ以前の章は後より付け足された章なり。ゆへに、雲隠の章から…

「トーマス・ベルンハルト、絶望だけが人生だ」

「トーマス・ベルンハルト、絶望だけが人生だ」さて、絶望の描き方は、誰に教わる?単純化してもまだしたりないキリスト教徒サミュエル・ベケット?豪華絢爛なキリスト教徒ダンテ・アリギエーリ?(そう。ダンテはファーストネームなんだ)このオーストリア…