現象の奥へ

【詩】「ねじの回転」

「ねじの回転」 もちろん、ヘンリー・ジェームズのこの題名の小説は読んだ。 こんなタイトルの詩も書いたし、詩集も出した。 そして、いままた懲りもせずに、同じ題名の詩を書こうとしている。 甥や姪の家庭教師として雇われた女が、その別荘だったかの屋敷…

【詩】「もう恋なのか」

「もう恋なのか」 精神分析の本をたくさん読んで偉そうに語っていた某女性詩人のページに、 「でたらめ書かないで」とコメントしたらブロックされた。 「あ、そ」で、痛痒は感じなかったが、ある年年賀状が来た。 なんで?と思ったが、試しに彼女のページに…

【詩】「おお錯誤!」

「おお錯誤!」 文章読本は何人かの文豪によって書かれているが、なかでもりっぱな日本語の谷崎某の『文章読本』は、 同じ題名の本を書きながら、丸谷才一はそのなかで、 「腰をすゑて仔細に読み進むとき、人はこの名著に含まれてゐる錯誤に驚くことにならう…

【詩】「闇の物語」

「闇の物語」 They burn, these flares and my heart, and send off smoke. The smoke from my heart refuses to be dispersed.* 篝火にたちそふ恋(こひ)のけぶりこそ世にはたえせぬほのをなりけれ 闇、匂い、異国のひとの頭脳、 が、混じり合う。 時代、…

【詩】「ボルヘスがジョイスに祈る」

「ボルヘスがジョイスに祈る」 ボルヘスがジェームズ・ジョイスを神のように祈っている詩がある。 ジョイスによって救われたと。 Entre el alba y la noche está la historia universal. moocow(もーもーうし) なんて言葉を小説で使ったのは彼が世界で最初…

【詩】「Petites Madeleines(マドレーヌちゃん)」

「Petites Madeleines(マドレーヌちゃん)」 「もう何年も前のことであったが、コンブレーで、眠るとき、芝居でも物語でもなかったものは、 私にとってはすでに存在しない、 冬のある日、ママは私に、飲む習慣のなかった紅茶をすすめた」 "Du côté de chez …

【詩】「Dr.Strangelove__Or:How I Learned To Stop Worrying And Love The Bomb(ドクター・ストレンジラブ_あるいは、いかにして私は心配するのをやめ、爆弾を愛するようになったか」

「Dr.Strangelove__Or:How I Learned To Stop Worrying And Love The Bomb(ドクター・ストレンジラブ_あるいは、いかにして私は心配するのをやめ、爆弾を愛するようになったか」 キューブリックの最高傑作にして私のバイブルである。 なんど観ても笑ってし…

【詩】「J.L.B. v.s. J.L.G」

「J.L.B v.s. J.L.G」 かたや、暗闇にまぎれ、密かに舟を漕ぎいれ、まだ癩病が流行っていない村に足を踏み入れる。 かたや、遠い過去の未来都市で、古びたSFを物語る。 かたや、火のなかに愛を見、 かたや、夥しいテクストに放尿する。 それでも、ふたりは…

【詩】「恋人」

「恋人」 愛する、ジェイク・ギレンホールが、ちょっとハスキーな声で、 フィッツジェラルドの『華麗なるギャッツビー』を朗読しているオーディオブックを、毎夜聴いている。 いったいどんなハナシなのか?←(笑) わたしはわからないのである。 レオナルド…

【詩】「吉田健一の、その作品を愛してなければ翻訳などできない、という言葉を読んで」

「吉田健一の、その作品を愛してなければ翻訳などできない、という言葉を読んで」 たとえばオルセー美術館のような広くてりっぱな芸術空間に、 いかにも高そうな額縁の絵があれば、 絵はたとえ、子どもが描きなぐったような類いでも、 りっぱな傑作に見える…

【詩】「プーチン」

「プーチン」 KGBではトップまで行かなかった、それで印象はよくなった。 エリツィンに忠誠を尽くし、秘密警察FSBの長官になった。 周囲をチェカ、秘密警察関係者で固めた。 一九九九年、チェチェンとの「戦争」。 九月四日、二十二時、チェチェンとの国境近…

【詩】「仮面物語」

「仮面物語」 La poesía es conocimiento, salvación, poder, abandono.* ポエジーは認識、救済、力、放棄。 燃えおちたはずの、ノートルダム寺院で、捜し物をしていた、なにを? 男がやってきて、わたしも捜し物をしていると言った。 すでに燃えている場所…

【詩】「地質学的な隠喩。」

「地質学的な隠喩。」 井筒俊彦は高野山の記念日によばれて、講演をすることになった。 わたくしのような素人が、と、井筒はきりだし、そのうち、 しにふぃあんにおよんだ。 意味を超えたことばが、宇宙を包んでいるんです。 山の葉っぱのひとつひとつが声を…

【詩】「Shall I compare thee to a summer's day?」

「Shall I compare thee to a summer's day?」 ゆらぎ、ゆらいで、はかない夏の日、 こぼれ、こぼれて、おさない恋。 ありす、じゅりえっと、ろりーた、そして、 鏡のなかのあなた。 いぎりすのなつはすぐにおわって、 いま、しぇーくすぴあは、三十歳。 少…

【詩】「ヘレナ」

「ヘレナ」 絶世の美女というものがあったら、 それは、伝説、を呑み込まねばならないだろう。 その女のために戦争が起こり、 彼女を奪った王子は、トロイアのパリス。 ごめんなさい、私が思い出させるのは、 劇団『四季』の影まりえ、それから、ダイアン・…

【詩】「愛」

「愛」 濫用されることによって意味を失う事態となろうとも、 実際に愛とか死とか夢というものがなくなるわけではないと、 いうようなことを吉田健一は書いている。 われ(吉田健一は対談の時に自分のことをこう言うが、 私もならって)も、そのエッセイ集、…

【詩】「Billy Collins」

「Billy Collins」 忘れられし時の石甕の中、わが愛は眠る。 そは巫女の形をして、蜥蜴に守られぬ。 夢とうつつの間の眠る瞬間、そは赤き舌を出しぬ。 アメリカ最大の詩人、ビリー・コリンズの、 The Trouble with poetryを読みつつ一日を過ごす至福 を感謝…

【詩】「角兵衛獅子のうた」

「角兵衛獅子のうた」 きょうもきょうとて〜♪ みたいな歌詞だったか。 美空ひばりの歌う、角兵衛獅子のうた。 白黒映画で見たような気もする角兵衛獅子。 いまは死語になってしまった。 第一、児童虐待でしょ? 志賀直哉の『暗夜行路』だったか、父親に棒に…

【詩】「荻生徂徠」

「荻生徂徠」 主君の仇を討った、赤穂の浪人たちに、江戸の街の人々は喝采を送った。 このテロリストたちを無罪放免にすべきだ、という意見もあった。 浪人たちは主君の菩提寺である高輪泉岳寺に身柄を預けられていた。 浅野内匠頭を、即日切腹させたのは徳…

【詩】「adornoの『mahler』」

「adornoの『mahler』」 音楽にウルサイ、とてもウルサイ、アドルノが、マーラーについて書いている本は、 正直言って、なにが書いてあるかわからない。 ただマーラーの交響曲は、ヴィスコンティの『ベニスに死す』や、 市川崑の『四十七人の刺客』のあいだ…

【詩】「William Blake」

「William Blake」 天国のなかに地獄のティールームをつくるもの、 妖精を堕落させ、韻を脳髄のどこか深いところに隠すもの、 赤ん坊とか涙とか娼婦とか虐待とか、 宇宙の忘れ物を届けるもの、 誠実さでひとを不快にさせ、不愉快さで歴史に残る。 この裸の、…

【詩】「あるいは裏切りという名の犬」

「あるいは裏切りという名の犬」 「36(トロントシス)」というのがパリ警視庁の通称、36 QUAI DES ORFEVRES という住所だから。 「まだ」十分痩せている、ジェラール・ドゥパルデューと、 醜男だけど、フレンチの匂い漂う、ダニエル・オートュイユが、 かつ…

【詩】「高木先生」

「高木先生」 うちはビンボーだったのに、母は私が小学一年になったら、絵を習いにいかせた。 小学生には遠い、豊橋駅を右手に左にまがって雑居ビルのなかにある文化ルームという、おそらく市が主催していたいまでいう「カルチャー」に徒歩で通った。 その講…

【詩】「時計じかけのオレンジ」

「時計じかけのオレンジ2」 じたいは「時計じかけのオレンジ」だと、 『ユーラシアニズム』という本の著者が書いていた箇所があって、 ハッと思った、ので、詩の題名にした。 これはアメリカ人ジャーナリストが、 プーチンの野望について分析した本で、邦訳…

【詩】「時計じかけのオレンジ」

「時計じかけのオレンジ」 KGB出身者は市民にもイメージが悪いが、 さいわいなことにトップまでは行かなかった。 代わりに、秘密警察のトップになった。 秘密警察は教会の裏に隠れている。 忠実であることはなによりで、市民の信頼も厚い。 市民とは中流以上…

【詩】「柳」

「柳」 うちはお茶屋で、玄関先に茶箱とその上に計りをおいて、お茶を商っていました。 父母は勤めており、父母が留守のときは、 小学生の私がもっぱらお茶を量り売りしていました。 お茶屋をやったのは、父の実家でお茶を製造していたからです。 「川柳」と…

【詩】「イリアス」

「イリアス」 歌ってくれムーサたちよ、 てな感じで出かけた戦争は、美女を取り返す目的ではなくて、 あらゆる戦争と同じ、略奪だった。 牛を連れ葡萄酒を持ち、 戦地に下りたっても、まずは、神に焼き肉と葡萄酒を捧げ、 兵士たちも喰らうのだった。ああ、…

【詩】「T.S.エリオット」

「T.S.エリオット」 長いあいだ、T.S.エリオットの肉声を聴き続けている。 氏が朗読するCDをiTuneアプリに入れて、何代ものデバイスで聞き続けた。だから、 そらでも、氏の声を再現することができる。 『荒地』という詩集は、日本ではかなり誤解されている、…

【詩】「久女」

「久女」 杉田久女が、立子の独楽と落葉の連作五句を論じている。 独楽を持って寺の境内を上ってくる子どもたちの姿を、 映画のように次々移り変わる五句を、まさに、 映画のようであることを気づかせるように解説している。 そこで私も独楽で遊んだことを思…

【詩】「たゆたって」

「たゆたって」 石川淳「西游日録」は、文学者仲間、 安部公房、江川卓、木村浩と、 パリへ行っててんやわんやの旅行記だが、 ホテルに着いたら失敬なフランス人の若者が部屋に入り込んで勝手にシャワーを使っていた。 そんなエピソードも達筆な書きっぷりに…