現象の奥へ

【昔のレビューをもう一度】『T2 トレインスポッティング 』──懲りない面々が放つ脱青春映画……2!(★★★★★)

『T2 トレインスポッティング』(ダニー・ボイル監督、2017年、原題『T2 TRAINSPOTTING』 2017年4月26日 3時10分

 吉田健一によれば、ヨーロッパ人にとってのヨーロッパとは、故郷のなじんだ風景以外のなにものでもないそうで、それは当然、それぞれに違う。それを思い出させてくれる、スコットランドはエンジンバラを故郷に持つ、ワルガキ4人。コネなし、カネなし、学歴なしで、「選べる人生」なんかなくて、なんとなく、ドラッグにハマった彼らの、人生が、それほど楽しいわけもない──。前作は、ドラッグ中毒の画像──便器の中からなにか流れ出てくるような──が印象的だった。坊主で童顔のガキンチョ、ユアン・マクレガーはその後、りっぱなスターになった……でも、童顔が相変わらずで、前作の表情のまま出てくるのは、さすがヨーロッパ人だ。金を持ち逃げして、オランダに逃亡、そこで、結婚し、まともな人生を始めたが……、やはり躓いて、故郷のエジンバラに戻ってみれば、「エジンバラにようこそ!」と観光ビラを配ってるオネーチャンの出身地を聞けば、東欧のどっかの国だった(笑)。
 20年経っても、昔の仲間は相変わらず、全然まっとうになっていなかった──(笑)。しかし、今回、へたれのスパッドに文才があることがわかり、一編は、スパッドの語りのなかに収束する。ステレオタイプの青春モノに、すっぽり収まった、『アメリカン・グラフィティ』という映画があったが、こちらは、『スコティッシュ・グラフィティ』で、しかも、まっとうな物語にはどうにも収まらない。脱構築し続けてゆくことが青春か。とまあ、「脱構築」なる言葉も、実は、アメリカ人が考えたとか。
 ダニー・ボイルの作品は、音楽がすばらしい。ユアン・マクレガーが20年ぶりに戻った自分の部屋で、前作の曲を「レコード」で、かけようとして、盤に針を置くが、すぐにやめる。いろいろあって、最後に「やっぱり」かける。音楽に合わせ、ユアンは、ゆっくり踊り出す……ジ・エンド。すばらしい幕切れ。当然、サントラは、iTune Store で即買いで、毎日犬の散歩はT2な日々だ(爆)。