現象の奥へ

【詩】「雨が空から降れば」

「雨が空から降れば」

 

むかし
「雨が空から降れば
思い出は地面に染みこむ」
という歌があった。ペーター・
ハントケがまだ劇作家で、
『被後見人が後見人になりたがる』という
台詞のない戯曲を発表していた時代
その題名は、シェークスピアからの引用で
早稲田小劇場という劇団が
カフェ裏に小屋を持っていて
別役実鈴木忠志のために
芝居を書いていた。それから
アリスが登場して別役は
アリス役のくぬぎいくこという年上の
女優と結婚した。ある芝居がはねたあと、私は、
このカップルが仲良く腕を組んで帰っていくあとから
歩いて行った。そのときふいに、
「雨が空から降れば」
という歌詞が口をついて出た。
ときに第一次世界大戦は、
ドイツとフランスの意地の張り合いから始まって、
「国の防衛のため」という名目のもと
第二世界大戦など比較にならないほどの
戦死者を出した。
「雨が空から降れば」
「思い出は地面に染みこむ」