現象の奥へ

【昔のレビューをもう一度】『ブレードランナー 2049』──陳腐。(★★)

【昔のレビューをもう一度】『ブレードランナー 2049』──陳腐。(★★)

●『プリズナーズ』『複製された男』『ボーダーライン』『メッセージ』と多くを観て惹かれてきた、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督である。二回観て、評価を逆転させたが、冒頭を見逃した第一回目の評価をYahoo!映画に投稿した、低評価レビューである。ここでは見逃しているものがいろいろあって、そのひとつに、ゴズリングが読んでいる本である。それは、ナボコフの『Pale Fire(青白い炎)』である。この小説は詩の形式ながら、その中に殺人事件が隠されている精巧なものである。いかにも、レプリカントが読みそうな本である。これにインスパイアーされて、私は、『Pale Fire (青白い炎)』という詩集を作った↓

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ブレードランナー 2049』( ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、2017年、原題『BLADE RUNNER 2049』)
(ネタバレ注意)2017年10月28日 6時11分

前作の時点から30年経過しているわりには、前作とほとんど同じに見えるロス(?)の街。酸性雨は降り続け、レプリカントは溢れ続け、前作でレプリカントを愛し、二人でどこかへ逃走した刑事デッカードはゴーストタウンのようなところに隠れ住んでいた──。
 某所で発見された人間の骨と髪の毛を分析する市警(いまだに?)は、骨に製造番号を見つけ、それが、レプリカントであることがわかる。そして、さらに調べると、そのレプリカントは身ごもっていたことがわかり、帝王切開で子どもが出されたこともわかる。さあ、その子を探せ!である。ディケンズの時代のロンドンのように、子どもばかり働かされている場所がある。刑事のK……のあとには、番号がある、レプリカントであることが早くに明かされる。そう、「今度の主役」は、レプリカント
 ハリソン・フォードに代わって、ヒーローを演じる、ライアン・ゴズリングの刑事は、レプリカントなのである。そして、魂があると信じている。そして、もしかしたら、デッカードレプリカント、レイチェルの子どもは、自分なのではないか?とさえ思う。
 彼には、ホログラムのガールフレンドのような「女」がいる。その「女」は、Kを愛しているようでもある。前作と主題が重なる。……というか、前作の「柳の木の下」を狙った作品である。斬新さのある、ドゥニ・ヴィルヌーヴではあるが、リドリー・スコットが製作総指揮で、睨んでいるとあらば、そう好き勝手にはできなかったと見える。どうりで、スコット監督の、『エイリアン:コヴェナント』でも、レプリカントがでてきて、旧型だの新型だのいっていた。それと同じことを本作でも言っている。
 魅力的な人物がひとりもいなくて、キャラが立っていない。ただひたすら、前作の「続き」のオハナシを作るのに終始。
 どーでもいいが、人間そっくりで、妊娠までしてくれるレプリカントではあるが、そのあたり、科学的に、「少しでもいいから」説明がほしい。いったい皮膚や臓器はどういった材質でできているのか?
 ごていねいに、前作で、レプリカントルトガー・ハウアーが、雨のなかで「死んで」いき、名演と言われたが、そっくりそのまま、ライアン・ゴズリング、今度は、雪のなかで「死んでいく」。まあ、36歳のゴズリングは、リアルタイムでは、前作を見てないでしょうが。しっかし、ハリソン・フォードが出ると、もうそれだけで、物語は陳腐化する。そのことを、もっと考えた方がよかったのでは?
 普通の字幕版がなかったので、iMAX3D版を鑑賞。まあ、それなりに建物の高さによる、「深さ」は出ていたと思うが、それだけでは、星をもうひとつ追加はできない。音楽は、まあ、よかった。最後のクレジットととも流れる曲だけは、2049になっていた。それで、星をひとつ追加。