現象の奥へ

『パラサイト 半地下の家族 』──『オールドボーイ』の域に達していない(★★)

『パラサイト 半地下の家族 』(ポン・ジュノ 監督、2019年、原題『PARASITE』)

2004年のカンヌでグランプリを取って、韓国映画の底力を見せつけた『オールドボーイ』(パク・チャヌク監督、2003年)のレベルの高さとどんでん返しには圧倒されたが、あれ以来、韓国映画は、あれを超えるものを作っていない。本作も、紋切り型の域を出ておらず、金持ちも貧乏人も、リアリティに欠ける。あれなら、『万引き家族』のキメの細かいリアリティの方が遙かに説得力がある。
 半地下に住む貧乏家族は、その日暮らしで食べるものも困っているのに、全員スマホを持っている。一方、IT企業のCEOの家は、金持ちというには、どこかみすぼらしい。格差などというほどのものでもない。しかも、ストーリーは題名から推測がつき、さらに「もう一つ」の家族の存在が、本編を不条理劇へと導いていくわけでもなく、音楽の入れ方は、ハリウッドのパクりである。俳優の表情も日本の俳優の集中力のなさを彷彿とさせる。邸宅の先住者から勤めている家政婦の、北朝鮮をおちょくった演説は、韓国映画ではよくあるおちょくりのひとつである。
 カンヌ映画祭は、パルム・ドール(最高賞)が、ほぼ審査委員長の好みで決まってしまうので、この回が誰だったか知らないが、それが傑作の証明ではない。一方、アメリカのアカデミー賞は、同業者組合の組合員全員の投票なので、候補の段階から多くの投票者を持つ。ゆえに、客観性はわりあい高い。しかし、本作も、アカデミー賞の「外国語映画賞」ではなく、本選候補になるかもしれないという噂も耳にしたが。
 伏線らしきものの、あるものは回収されているが、未回収のそれも多い。エンターテインメントとはいうものの、洗練度はそれほど高くなく、芸術作品としては突っ込みが足りない。
 しかしいちばんの難点は、どこかに既視感があるところだ。そして天候の悪化、洪水はまったくのご都合主義だ。