現象の奥へ

『免疫力を強くする 』(宮坂昌之著)──ウイルスはマスクの網目より100倍小さい

『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ (ブルーバックス)』(宮坂 昌之著、2019年12月18日、講談社刊)


タイトルは、巷間にあふれる、科学的裏付けのない健康本のようであるが、BLUE BACKSシリーズなので、科学の本である。したがって、書き方も論文を一般向けに読みやすく解説した「程度」である。したがって、「御利益箇所」(笑)はすぐには出てこない。そういう向きは、最終章「『免疫力』は高ければ高いほどいいわけでない」(277ページ)を読むべし。

第1章、「病原体の侵入・拡散を防ぐ体のしくみ」
第2章「ワクチンとはなにか」
などなどから入って、細菌とウイルスの違いなどの、「生物」の基礎をざっとさわり、個別ウイルスの解説、免疫システムについて、研究データとエビデンスを踏まえて、素人にもわかるように解説しているが、とてもじゃないけど、一回読んだだけでは、この「システム」はアタマに入らない。読み終わってアタマに残るのは、マスクの網目、10マイクロセンチメートル、インフルエンザウイルス0.1マイクロメートル。インフルエンザウイルスの例であるが、ウイルスはマスクの網目より100倍小さい。口から摂取するものによって免疫力があがるというものは、一つとして科学データはない。免疫力が強すぎると(システムは複雑であるが)体の部位が炎症を起こし、生活習慣病脳卒中脳梗塞うつ病……)を引き起こす。ではどうするばいいか? ストレスを避け、運動を適度に取り入れ、バランスの取れた食生活をするという、「あたりまえのようなこと」。
マスコミや世間のウワサ、商法には踊らされないことである。
本書は、新型(というのもコロナウイスルは何種類もあり、それらは以前から、コウモリなどの感染が確認されていた。6歳以下の子供の多くは、コロナウイルスによる風邪を経験しているそうである)コロナウイルス騒動以前に出版されている。
しかし、本書によって、世間の多くの病気は、さまざまなウイルスが関係しているのを知った。

ちなみに、厚生労働省のホームページの感染に関する箇所は、本書の100倍以下の情報量である。