現象の奥へ

【本】『呼吸器内科医が解説! 新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 』──いまの日本人の必読書

『呼吸器内科医が解説! 新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 』(粟野 暢康 (編集), 出雲 雄大 (編集)、医療科学社 、2020年3月31日刊)


ノーベル賞学者の山中伸弥氏が、日本の現状を見かねて個人の責任でサイトを開き、医者として信頼できる情報を、自分で判断して伝えているが、そのサイトで「たいへん勉強になった」と紹介されていたのが本書である。私が買ったほんの数日前より、かなり値段があがっている。すでに「マーケット」にしかないのかも。本書は、実は、本というには薄い小冊子にすぎないが、新型コロナウイルスに関する医学的データと論文解説、適切な対応、具体的措置が書かれていていて、本来医療関係者に向けて書かれたものの、「一般の読者も眼を通してほしい」とある。
 世間には、このウイルス(SARS-COV-2)が原因となる病(COVID-19)が蔓延し、さまざまな「言説」(科学風、医学風、「現代思想」風、宗教風(霊とか(笑)))が跋扈しているが、必要かつ重要なのは、こうした科学的データ(症例を含めて)である。昨今、日本政府の非科学的対応は絶望的であるが、それ以上に、ジャーナリストのでたらめ無責任の「言説」には目に余るものがある。いわく、「この騒動は、中国とWHOに責任がある」。こうした責任を誰かに押しつければいいいという態度もまた、この事態に対しては、非科学的と言える。この冊子を見れば、病は、武漢の鮮魚市場の勤め人から始まり、わりあい早い段階で、厳しい措置をとった武漢政府のおかげで、「(武漢内では)いまはある程度収束したかにみえる」。しかし、このテのウイルスの特性上、完全に消えることはまずあり得ないのではないか、ということにも思い至らされる。
 かなりの深刻度をもって発刊された冊子ではあるが、本書は、二月末、世界の感染者8万人の時点で書かれている。
 一ヶ月後の今、感染者は100万人を超えた。いかなる態度が必要か、推して知るべし。

 

呼吸器内科医が解説!  新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 —

呼吸器内科医が解説! 新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 —

  • 発売日: 2020/03/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)