現象の奥へ

【詩】「薄雲(うすぐも)」

「薄雲(うすぐも)」

ええと、島村抱月スペイン風邪で死んで、愛人松井須磨子は首を吊ってあとを追いました。
そして、私は大学の授業で、須磨子の生の声のレコードを聴く機会を得ました。
「いのちみじかし、こいせよ、おとめ」と歌っているのですが、録音状態が悪いとしても、早口で殺伐とした感じで音程も乱れています、要するに下手なんです(笑)。
それで、四十年後ぐらいに、SARS-CoV-2というウイルスに世界は征服されてしまいました。
Nidoviral目Coronavitridae科の、一本鎖のRNAウイルスです。
ウイルスには意志はありません。
いつから地球に存在していたのか、それはまだわかっていません。
でも、大堰川の冬には存在していました。
あまりに寒いので源氏が二条東院へ転居するように勧めたのですが、明石の君は断固として承知しません。
そんなことをしたら、おのれの惨めさがますばかり。
二人のあいだの娘の姫君のみ、二条院(本宅)へ入られました。
物語はそれで終わらず、源氏の最愛の人、藤壺が死ぬ。源氏は念誦堂に籠もり、
 深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは墨染に咲け
 入日さす峰にたなびく薄雲はもの思うふ袖に色やまがへる