現象の奥へ

【詩】「朝顔(あさがお)」

朝顔(あさがほ)」


朝顔というは、加茂の斎院になっていた姫君が父の死去によって役職を解かれ戻ってきた、その姫君のことを言い、かつて朝顔の歌を詠み交わしたことからついた名前である。

姫君は、源氏の父帝の弟の子供であるから従姉妹にあたるのだろうか。

かつて求愛していた女がまた視界に現れたので心が揺れるのだった。その邸だかなんだかは、いろいろお仕えしているばっちゃまたちがいて、七十にならんとするばっちゃまが源氏に色めいて歌など詠んでくるのだった。

源氏は、三十代で死んでしまう女もいるというのに、いやー、長生きな女がいるものだと呆れる。

歯医者なんかないから、歯は抜けすっぽんぽんのすぼんだ口で、

「けふから赤い爪をあなたに見せない〜♪」などと言い寄ってくるのだった。いやー、びっくりしたなー、もー。

そして、源氏は、最愛の女、藤壺の夢を見るのだったが……

夢たってねー、いろいろあらーな。

ビンスワンガーの夢、フロイトの夢、ラカンの夢……

みんなちがう。そして「人間存在」も。

ハイデガーヘーゲルフッサール……

あなたは、どの夢に出ているんです?

 亡き人をしたふ心にまかせてもかげ見ぬ三ツ瀬にやまどはむ

 三途にて待っているのは渡し守いずこも同じダンテの神曲