現象の奥へ

【昔のレビューをもう一度】『サバービコン 仮面を被った街』──面白いのか面白くないのかわからない(笑)

●──と、書いたのは2年前だが、「今」は、確実に、傑作と言える。

『サバービコン 仮面を被った街』(ジョージ・クルーニー監督、2017年、原題『SUBURBICON』)
2018年5月8日 4時59分

  この映画、面白いのか面白くないのか、わからない(笑)。ていねいな作り、ブラックユーモア、少年役の子どもの利発そうな表情、マット・デイモンの太ったオッサンぶり、差別を強調することにより逆説的にその差別を批判する、ウディ・アレン流とも通ずる自虐的な笑い、近頃悪役が板に付いてきた、ジュリアン・ムーアの余裕の演技……などなど、どこをとっても悪いところはない。
しかし、本作、1980年代から温められていたというから、温めすぎではないのか? つまり、今のアメリカは、もう、ギャグなのか本気なのか、わからないところまで行ってしまっている。だから「今さら」こうしたものを出されても、そこに、たとえば、『ペンタゴン・ペーパー』のような、今の時代と切り結ぶものがないと、それは、ただの「レトロ」となってしまう。

  監督のジョージ・クルーニーは、大統領立候補の意志もあるというウワサを目にしたが、マジか? それとも、本作の次にもどんどん映画を監督していき、クリント・イーストウッドのような名匠を目指すのか? いずれしろ、できは悪くないながら、寝落ちし(笑)、レビューもやる気がでない、こんな作品から言えることは、クルーニーは、映画を本気で愛していないのではないだろうか?