現象の奥へ

『フレンチ・コネクション 』──本作を見ずして映画を語るなかれの古典

フレンチ・コネクション』(ウィリアム・フリードキン監督、1971年、原題『THE FRENCH CONNECTION』

 私の原点だと思っている映画で、「ビデオ」(笑)で二回ほど見ていたが、今回Amazonレンタルで見直してみようと思った。初公開時は、高校生だったので劇場では見てない。
 やはりこの時代の映画は、今の映画が完全に失ってしまっているものを持っている。それは、ひとつひとつのショットのリアルであり、手応え、存在感、そしてそうしたものが「物語」を積み上げていくということ。今のように、物語のためにショットがあるのではない。そして物語は、むしろこじんまりとしたもので、フランスのマルセイユでヘロインを製造している金持ちが、ニューヨークに「ブツ」を売りに来る。その際、有名芸能人の自家用車を、その中に「白い粉」を隠している。そしてその車を船に載せてニューヨークの埠頭に到着するのである。
 一方、こうした犯罪を迎え撃つ、NY市警麻薬課のジーン・ハックマンロイ・シャイダー。場末のバーの「ガサ入れ」をして「末端」を洗い出し、その末端から情報をつかんでいく。スピルバーグを思わせるカーチェイスと地下鉄を使った人間の足を使ったチェイスが本編の見せ場で、場末の廃屋の陰、街のウインドウの光、ハックマンの子供じみた瞳、マルセイユの麻薬製造業者のずる賢い瞳などが、純文学のように「語られて」いく。そして、最後の廃屋での銃弾戦で敵方の数人は仕留めたものの、大物は取り逃がす。最後に一発の銃声が響き、この映画は突然終わる。この終わり方が実にいい。
 ハックマンの冬のニューヨークでの張り込みの、寒さと、ひもじさ、惨めさ、執念が伝わってくる。そしてそうした全身の演技が、彼に、アカデミー主演男優賞をもたらした。
 ドイル刑事こと「ポパイ」のその後が、ジョン・フランケンハイマー監督の『フレンチコネクション2』(1975年)で描かれるが、彼は、麻薬製造業者のボスを追って、マルセイユへ渡る。そこで──。「Yahoo!映画レビュー」での『2』の評価は低いが、これはこれで、興味深いハードボイルドとなっている。
 また、フリードキンは、ロイ・シャイダーを主役にして、古典的名作『恐怖の報酬』(1953年)のリメイク(【完全オリジナル版】は、1977年)を作ったが、イヴ・モンタン主役の、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のオリジナルにははるかに及ばなかった。オリジナルは、テレビの録画で、リメイクは、劇場で見た。