現象の奥へ

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』──さすがアレン、オバサン的どんでん返し(★★★★★)

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(ウディ・アレン監督、2019年、原題『A RAINY DAY IN NEW YORK』)

 ニューヨークは、14年前に行ったきりだ。そのときも、雨が降っていた。1月下旬の真冬で、かなり寒いと脅されていたが、その年は、わりあい温暖で、雨になった。本編は、ニューヨークの、ハイソな人々を中心にした話で、主人公のギャッツビー(名前がいい(笑)))の部屋も、のちに知り合う昔の彼女の妹の住んでいる部屋もゴージャスで、広いリビングの窓ガラスの向こうに降りしきる雨が美しい。心地よさ、この映画の主題はそれなのでは? アレンお得意の短い話のなかで、きっちり大人の思想を盛る。今回も、チャラいニューヨーカー(自身もニューヨーク出身なので板に付いている)のティモシー・シャラメが、人生に開眼する。それは最も逃げたかった母親を通して。パーティーや教養話に打ち興じるスノッビーな母親。ギャッツビーを辟易させていた彼女が告げる、オセロゲームで白が完全に黒になるような話。

 ウディは、今回も、アリゾナ生まれの調子のいい美人女子大生、エル・ファニング(姉のダコタに言わせると、相当クソ度胸があるらしい、それでか、いまや、ウディのお気に入り。巨匠だと、次々、旬の俳優を確保できる。シャラメもその一人)の若い美しさを見せつけ、若くて美しければ、ことはどんどん面白い方向に運ぶ、普通のオバサンを嘲笑うかのように……。と、見せかけ、とんでもないどんでん返しを用意している。やっぱりニューヨークはこうでなくっちゃ。今年こそ行こうと思っていたんだけど……。

 厳しくも皮肉なカードを用意して、オバサンの勝ち(笑)。

 ちょっとだけしか美男を披露できなかった、フツーのオジサン風のジュード・ロウも、つい、よい味を出してしまうニューヨークだ。シャラメは当然、ハマりすぎ、というより、空気のように自身の生活を生きているかのようだった。FBに流れてきたインタビュー番組を見たが、冷めた感じがやはりホンモノ感漂っていたシャラメ。どこかの国のゲーノー人とは大違い(笑)。