現象の奥へ

【詩】「創世」

 

「創世」


脚に刺さる棘のような草の生い茂る沼に舟を漕ぎいれ

泥に足を入れるは、

おのれを火とも知らぬ火

と書いたは、ボルヘス

詩人は曲線の美しさを教え

ウイルスはRNAの曲線を学ぶ

すべて

宇宙のはじまりの日

いまだ

この宇宙は誰かの網膜の残像でしかなく

高島野十郎が千葉の原始を喜ぶアトリエで

最後の蝋燭の光輪を書き終える

のを待つしかない

のか。