現象の奥へ

『ポルトガル、夏の終わり 』──うちの民宿にはいろいろな人が泊まりました(★)

ポルトガル、夏の終わり』(アイラ・サックス監督、2019年、原題『FRANKIE』)

フランスの女性は、生涯「女」をやめることができない。ゆえに、女優も、「女」であり続ける役しかできないし、フランス系の映画は、「女」以外の役がない。たとえば、『ビリー・ジョエル』の母親を演じた、キャシー・ベイツのような役柄がないし、やりたくもないのだろう。『ポルトガル 夏の終わり』なんて詩的な邦題がついているが、原題は、イザベル・ユペール演じる女優の愛称、「フランキー」である。余命幾ばくもない往年の女優が、家族を避暑地に集め、人生の決算をする……みたいなストーリーであるが、ベルイマンのようにストーリーを薄くしか見せないが、まったく似て非なるものである。キャストの誰もが魅力がなく、ポルトガルの避暑地にも、行ってみたいとは思わない。同じような雰囲気であろう、スペイン最北端の森には行ったことがあるが、こちらの方が、避暑地でないぶん、さっぱりとしていた。
 垢抜けないホテルのプール。プールサイドに二つ並んだ椅子があるところから始まるが、その椅子がもともと撮影したホテルのものなのか、小汚いクッションが置かれた木の枠は、腐っているかのようである(笑)。そこへ、イザベル・ユペールが、スイムウエアにガウンを羽織り、「よたよた」(実際はそうでもなかったが、印象が)と登場する。もー、わかったというオープニング。最近のフランス(本作は、イギリスも噛んでいて、ポルトガルの観光の宣伝も兼ねているようであるが)映画は、なんでこんなんとるん?ってな作ばかり。よほどお疲れのようである。コロナ以後は、厳しいやろねー。