現象の奥へ

【詩】「きょう、私はきみのことを考える」

「きょう、私はきみのことを考える。」
 
あの場所。
草が生えていて
ドブ川があって
田んぼもあって
記憶のなかのあの場所のことを思う。
それがどんな意味なのか?
生まれてしまったから
この地に
だからきみの記憶に住み着いた
保育園にいき
生まれてはじめてチーズを食べた
石鹸のようだと思った。
それから「こがねまる」の紙芝居をみて
それからぶんつうをした。
鹿児島とか茨城とか千葉とかインドとか
外国のひとびと
日本がすごい国だと思ったのだろう
それからはらだまりちゃんが転校してきて
豊橋はすごい街だと聞いたと。たしか
中間市からなんよ。とまりちゃんは言った。
まりちゃんはやがて名古屋に越した。
詩は、「なになにのようだ」と書くんだぞ
と先生が言った。それでわたしは
「夕べの海は宝石のようだ。朝の海は果物のようだ」
と書いてえらくほめられ、
先生は黒板に書いてくれた。
はじめて見た鳥はすずめで
父は「朝はどこから来るかしら?」の歌を教えてくれた。
なぜ、ここに生まれたのか
いまだ
わからず。
ただ、あの場所がときおり
夢のように
意味もなく
考える
考えろと、
偉い詩人が書いてる
本のなかで。