現象の奥へ

『スパイの妻<劇場版> 』──学芸会レベル(★)

『スパイの妻』(黒沢清監督、2020年、英語題名『WIFE OF A SPY

 蓮實重彥は、黒沢明のことを二流だと言った。さもありなん。近頃、「世界」では、クロサワと言えば、この「清」らしいけど、それはどこから出た「噂」なのか(笑)? 悪いけど、この映画、ベネチア映画祭銀獅子賞授賞とかいうニュースが流れてきたので見たけど、まー、映画祭の賞なんてお祭りみたいなものだから、内容のレベルを保証するものではない、という証左。
 本作は、俳優の演技、演出、脚本すべて学芸会レベル。この三つのどれも甲乙つけがたいほど(笑)ひどい。まず、俳優の演技、これはもう日本の俳優の演技は、アメリカからは大きく引き離されて、韓国にさえ及ばない。独自の路線を行きつつある(笑)。口先だけの台詞術が、驚いたことに、かつての新劇的なあまりに新劇的な(笑)。ああいうのをうまい演技と勘違いしてしまってすでにレキシになりつつあるのは恐ろしいことである。演出(監督)は、魅力的なシーンをひとつも作らず、ただ「すじ」を説明するのに精一杯。脚本がもともと「説明」に終始している。監督を始め、スタッフの方々、ついでに俳優の方々、あんまり映画を観てないのではないか? そして歴史認識もひどい。コロナ以後を生き残ることは不可能。