現象の奥へ

【詩】「ヴァレリー、地中海に捧ぐ」

ヴァレリー、地中海に捧ぐ」

 

光。

ニンフたちがほほえんで、ダ・ヴィンチの坊やを海の底へと引っ張っていった──。

ここは都大路羅生門の上には、捨てられた死体がいっぱい。

これ、みんな無料(タダ)なの?

レオは眼を見晴らせて言った。

死人を買うやつなんかいないよ、老婆が死体から髪を引き抜きながら答えた。だって、

フィレンツェでは、ぼくは研究のために死体を買ってたよ!

へえー。老婆は驚きの声をあげたが、次の瞬間には闇の中へ消えていた。

と、アクタガワは書いた。アクタガワって?

服毒自殺したバカだよ。

下人が言った。頬のニキビを押さえつつ。

闇、平安時代はそろそろ終わる──。

南に向いてる窓を開け〜♪

それって、エーゲ海じゃん。

地中海はもっと西。

夏でも水が、

身を切るように冷たいよ。

Il rest d'un homme ce que donnent à songer son nom, et les oeuvres qui font de ce nom un signe d'admiration, de haine ou d'indifférence.*

ひとりの人間のあとに残るものはその名前と、その名前を、賞賛の、憎しみの、無関心の、しるしとしての作品への思い。

 

*****

* Paul Valéry "Introduction à la méthode de Léonard de Vinci"

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