現象の奥へ

【詩】「河上徹太郎が編む『萩原朔太郎詩集』」

河上徹太郎が編む『萩原朔太郎詩集』」

おそらく

日本の現存詩人の多くは

萩原朔太郎という詩人は当然知っていても、

氏がどういう詩人だかはほとんど

知らない。

氏のまねをしているアナクロな詩人をたまに見かけるが

それは、

氏の若いときの

誰もが感じるような甘い青春時代の

感情を書いた詩である場合が多い。

外国の文化に通じた評論家

河上徹太郎によれば、

朔太郎は、明治、大正、昭和と

生き抜き、それぞれの時代に

そのときの年齢に応じた、

また時代を分析した

詩を書いている。

いちばん重要なことは、

日本的なもの田舎的なものを

嫌いながら

その感性のうえで書くしかなく

パリには生まれていなかったので、

それはそれでしかたなく、いわば、

それを開花させた。

河上氏を立派だと思うのは

解説において、詩の引用を

最小限にしているところである。

いくつかの詩を引用しても、

たいてい、二行しか、引用していない。

わが国において

ダンディにとっての前進が即ち

没落(退廃)であり、

この宿命がダンディ萩原朔太郎

悲劇である。

と、結んでいる。
 

吸いさしの煙草で北をさす北昏ければ望郷ならず

寺山修司
 

この歌は萩原朔太郎に捧げられた歌

のように思える。

そして

ボードレールはじっと

朔太郎が利根川畔のレストランで

逢い引きしているのを

見ている。