現象の奥へ

【本】『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 』──煽るのはよくない(★)

『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 』──煽るのはよくない(★)

『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 』(池田清彦著、宝島新書、2020年8月7日刊) 

 本書が出たのは、去年(2020年)の8月である。この時期は、コロナがピークに達していた時期だが、経済対策のため、厳戒態勢がゆるみつつあった時期でもある。この時にこのような題名の本が出れば、どこかへ行きたくてうずうずしていた人々は「それみろ」と飛びつくだろう。

 しかし、実際は、個々人の「自粛」は大いにコロナの感染防止に役立っているどころか、個々人の自粛なくして、コロナ収束は望めない。

 そういう状況のなか、こともあろうに、非常事態宣言が格都道府県に次々追加されていく昨今(2021年1月7日以降)、このような題名の本が新聞広告に出ていた。これは、出版社の「意図」、「立ち位置」だと思われる。

 無自覚のまま出あるく人々もそうだが、このような陰に隠れたような出版社も、コロナ感染防止を妨害しているのではないだろうか?

 著者に関していえば、「地球温暖化もウソだ」とか、きちんとしたデータなくして、テキトーに、生物学者であることをたてにとって、無責任な考えを本で振りまいている。私も、この著者の本は、題名に惹かれてたくさん買い、「主著」と思われる『構造生物学とは何か』という本さえ持っている。しかし、かなりイデオロギー的と言える三流評論家(?)加藤典洋を持ち上げていたので、この著者を見限った。