現象の奥へ

【DVD】『ブラックホーク・ダウン』──兵士たちのキャラを豪華俳優が演じる(★★★★★)

ブラックホーク・ダウン』(リドリー・スコット監督、 2001年、原題『BLACK HAWK DOWN』


 20年前にリアルで見た。そう、21世紀に入ったばかりの年で、9月には、「9.11」事件が起きた。本作は、それ以前に撮影されているが、私のなかでいつまでも印象に残る映画で、コロナ禍の自粛で、映画館に行かない日々に、やっと購入してあったDVDを見ることができた。この映画の「挿入歌」、民族音楽風の「ボラボラ」までiTune Storeで買って、ときおり聴いていた。

 最も印象に残ったシーンは、東ソマリアの「内戦」に「干渉した」アメリカがよこしたデルタフォースの特殊部隊の将軍役の、サム・シェパードが、当地の民兵に資金提供している「ビジネスマン」の黒人に、「内戦だって?30万人もの人が殺されている、これは、ジェノサイドだ」と言い放つ、そのシーン。

 その昔は、他国で、人権侵害や軍事政権によるクーデターなどが起きても、「内政干渉」という壁があったが、いまでは、ミャンマーやロシアのできごとに関しても、「内政」はどんどん「干渉」される。世界はひとつという意識が行き渡ってきたように思う。

 それにもまして、この映画では、「戦場の」、とくにアフリカの戦場の、そして、戦争という日常の、兵士たちのディテールの、きめ細やかさである。これを、美学をいっては不謹慎なのかもしれないが、リドリー・スコット特有の美しさが、酷薄な戦場を祈りのようなものにも変えている。そこでは、戦争とは?とは決して問えない人類の謎に包まれる。

 主役の若き軍曹、ジョシュ・ハートネットの正義感と理想を「映画的視点」として、エリック・バナユアン・マクレガーオーランド・ブルームなど、のちに大スターになる俳優たちが、兵士という仮面を破って、人間を演じてみせている。

 

 

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