現象の奥へ

【詩】「時間のかけら」

「時間のかけら」
 
Un homme qui dort, tient en cercle autour de lui le fil des heures, l'ordre des années et des mondes.*
 
眠っているひとは自身のまわりに時間の糸を円を描くようにまとわりつかせている、年月や世界の順序にしたがって。
 
嘘をつく習慣のひとがいる。嘘をつくことをなんとも思わないひとがいる。あるいは、気づかれなければ嘘をついても差し支えないと考えているひとがいる。あるいは、そんなことさえ忘れてしまってまったく意識しないひとがいる。こんなことを書くべきでないかもしれないが、
私が製直ドットコムというサイトで売っている詩集は、知らないひともたまに買ってくれるが、それが誰であろうと、そこで、クレジットカードなどを使えって買えば、売り主のもとに、控えがくる。しかしそれは個人情報だと思っているので、おおやけにすることはない。
知っているひとで「そこで買いました」というひとがいたが、控えも来なければ、売上金も入金されないので、それが嘘であることがわかる。
誰が買ったかわからないことになっていると思っているのか。
こちらにわからなければそれでいいと思っているのか。それとも、そんな「些末な」ことなど次から次へ忘れてしまっているのか。
どーでもいいが、そのひとの、これまでの生を思う。
そうやって生きてきたのか。
表面だけ、かっこつけ、いいひとのふりをし、それで誰も咎めねば、それで採算がとれたと思っているのか。
眠っているプルーストよ、今宵は、そんな人間のために、時間のかけらを恵み、祈ろう。
 
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*Proust "Du côté de chez Swann"( COLLECTION FOLIO Gallimard , P5)