現象の奥へ

【詩】「只かりそめに思ひたちて」

「只かりそめに思ひたちて」

 

千葉県のやちまたで、白ナンバーのトラック運転手が酒を飲み、体の動きがきかず、小学生の列に突っ込んで、小学生五名のうちの二名を死に至らしめた事件は、その現場の道路の風景をニュースでみるたびに、まだこんな田舎が日本にあったのか、しかも東京近郊に、との思いが否めない。NHKの取材に、元PTA会長なるひとが、なぜか、にやにやしながら、「歩道を作ってほしいと要望は出していたんですがね」と言っていた。幅七メートルあるものの、車二台がやっとすれ違える「車道」にどのような「歩道」が可能なのであろうか? そこは正式の車道ではなく、トラックなどが「近道する」ために使われていた、住宅街や畑のなかの道であった。また、専門家によれば、道路に覆いのようなものを敷いて、車のスピードを30キロまでしか出せないようにする方が、歩道を作るより現実的であったし、縦列に並んで下校させる、いっしょなら安全という安易な考えが、よけいに惨事を引き起こしてしまったとも言える。

 

むかしよりよみ置る歌枕、おほく語伝ふといへども、山崩れ、川流れて、道あらたまり、石は埋(うずもれ)て土にかくれ、木は老て若木にかはれば、時移り、代変じて、其跡たしかならぬ事のみを、爰(ここ)に至りて疑なき千歳の記念(かたみ)、今眼前に古人の心を閲(けみ)す(確かめる思いだ)。行脚の一徳、存命の悦び、羈旅(きりょ)の労をわすれて、泪も落(おつ)るばかり也。

 

 国破れて、山河もまたなし

 

 夏草や兵(つはもの)どもが夢の跡