現象の奥へ

四方田犬彦詩集『離火』(2021/9/10、「港の人」刊)

 巻頭の「造花」がいちばんよいように思う。ゆえに巻頭なのか、短いからか。この調子で進んでいけば、もしかしたら、ウンガレッティ?

 しかし、あとは、感傷と古い意味での「現代詩」。しかし、さすが、プロ。文章はうまい。読ませる。しかし、この著者は、そのへんにうろうろしている、自称「大御所」「有名、」アマチュア詩人ではないので、自費ではなく、企画ものであろう。となると、それほど「ばらまく」わけにはいかず、寄贈される御方々の数も少ないだろう。かといって、エンタメを目指している谷川俊太郎に大手で発行され、それなり売れる、という道すじもとれず、おそらくは、「プロ」の編集者のもとの出版であろうが、はたして、どれだけの人がこの詩集を見ることができるだろう。私のように、自腹をきればいいのだが、それだけの関心と余裕が、SNS「いいね!」をした数百人のなかにどれだけあるだろうか?

 つまりは日の目を見ずに、著者の多くの著作のように過去へと流れていく……? まことにもったいない。


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