現象の奥へ

『ドント・ルック・アップ』──地球滅亡は彗星衝突ではなくネット社会のせい?(★★★★★)

『ドント・ルック・アップ』(アダム・マッケイ監督、  2021年、原題『DON'T LOOK UP』)


 確かに「物語」には新しさはないかもしれない。「地球最後の日」という物語である。しかし、この「プラネット」には、ネットがあり、IT企業があり、拝金主義があり、である。もう昔の地球には戻れない。

 地球に衝突すれば、地球が破壊されてしまうほど巨大な彗星が迫っているのを、「発見した」ジェニファーローレンスの天文学の大学院生は、担当教授のディカプリオとともに、首都ワシントンまで、大統領に、なんとかNASAから手を打ってもらおうと、訴えに行くが──。

 彗星を核弾頭でこなごなにすれば、なんとか助かる?

 大統領府は、政治家、学者などが入り乱れ、てんやわんや。なかでも、その大統領を演じているのが、わがメリル・ストリープ、ちゃっかり大統領補佐官には、息子をすえている。これが、ジョナ・ヒル。一方、テレビショーで「危機」をとりあえげ、大騒ぎのはしゃぎようは、テレビ司会者の、ケイト・ブランシェット。言いたい放題やりたい放題は、メリルといい勝負。自分の名前が彗星についているローレンスは、巻き込まれ型のヒロインで、途中、神を信じる不良少年、ティモシー・シャラメと知り合って、あっさり恋人同士になる。ディカプリオの学者は、家庭持ちながら、ブランシェットに「乗っ取られる」。

 アメリカ政府には、IT企業家のスポンサーがついており、地球の危機には、べつの宇宙に逃げ出す計画を持っていて、メリルもいっしょに逃げ出すことができた──。

 2万5000年後──(爆)。逃げおおせた者たちの宇宙船が、どこかの惑星にたどり着く。なかから、冷凍保存されていた人々(みんな全裸(笑))が出てくる。そこは、原始時代の地球のように、恐竜が跋扈していて、真っ裸のメリルが顔をがぶりとやられ、惨めな死を遂げる。一方、マム(メリル)に置いてけぼりをくらった息子=補佐官のジョナが石の穴倉から出てきて、マムを探す。「マーム? マーム?」何年後か知らないが、彼は大統領補佐官のままのスーツ姿で、貴重品でも入っていそうなアタッシュケースを持っている。

 ……なんだよ、これ?

 っていう映画でした。でも、アル中で電気工上がりの副大統領、チェイニーを、クリスチャン・ベイルが演じた『バイス』、リーマンショック以前に危機に気づいて大もうけした、金融マンを、やはりベイルが演じ、こともあろうに、ブラッド・ピットさままで出ている、『マネーショート』の、アダム・マッケイ監督ですから、ただでは転ばんでせう。本作が描いている「地球の終わり」は、彗星の衝突が原因ではなく、この阿鼻叫喚のネット社会そのものによってであろう、と、暗にほのめかしているような気がしてならない。それほどまでに、ネット社会を描ききっている。音楽もタイトルデザインも、キレている。