2021-12-25 【詩】「外伝」 詩 「外伝」 それはむかしむかし、葦の葉をより分け、 すすんだ記憶もかなたへ消えかけた夜、 ひとり岸におりたって、おとこを知らぬおとめが、 身ごもったといううわさ、 は、ひとびとの気持ちを、なぜか、 明るくさせた。 奴隷たちのことばさえまだ、成立しておらず、 権威も体系も、 うわさよりは弱々しかった。 わたしのおなかに、赤ちゃんができたの? そう。そして、この老女の腹にも。 じゃあ、いっしょに産みましょう。 鐘が鳴り、鐘が鳴り、 大天使はあくびをして飛び立った。