現象の奥へ

『キングスマン:ファースト・エージェント』──税金使ったスパイの時代はオシマイ(笑)(★★★★★)

キングスマン:ファースト・エージェント』(マシュー・ヴォーン監督、2020年、原題『THE KING'S MAN 』)

 公費を使いまくって、テキトーにかっこつけてる、「殺しのライセンス」を持つスパイの時代は、完全に終わって(なにしろ本人死んでるし、子どもも作ってる(笑))、こちら、すべて私費でまかないかつ、政治家の命令は受けないスパイ組織、「キングスメン」の時代となろう。歴史に残る名作『スターウォーズ』のように、「はじまり」は、第三作目となった。その「はじまり」も、紋切り型ではない。約100年前、平和主義者の公爵が、平和主義者でもいられないつらい出来事、政治的場所での悪意のため、妻を亡くし、その後、やっと成人するかの息子まで失った。この息子は、妻との愛のためにも、絶対に守り抜こうと、第一次世界大戦の兵士まで免れさせたのに、息子は使命感から自ら志願して行ってしまった。しかも、その戦場でも、堂々と戦いかつ、父の人脈で、戦場から帰れるのに、他の兵士と入れ替わってまで戦場に残って無駄な死を遂げた。

 入れ替わった兵士が公爵を訪ねていく。公爵は息子の死を知らされる。公爵の激しい悲しみと絶望。しかし──世界はとんでもない方向に動き出し、イギリスが危ない──。まー、あれやこれやで、とても、007のライセンスごときではできないことをやり遂げる組織を立て直す。

 「キングスマン」というテーラーを買い取り、その隠し部屋に、メンバーたちが集う。メンバーは、身分社会ではこき使われていた、メイドや黒人の下男。そして、息子にたまたま代役を頼まれた若き兵士? メイドは、全世界の要人のもとで働くメイドのネットワークを持っていた──(笑)。

 茶目っ気やお遊びを各所にちりばめ、「007」ものよりさらにグレードアップして「歴史」を動かすストーリーに仕立て上げた。いまこそ、虐げられた人々が立ち上がる時である。そういえば、あの『聖書』も、紀元前1000年以上前、最下層のヘブライ人が作ったのだった。そして、

 メンバーの呼び名が、アーサー、ランスロット、マリーン、と、「アーサー王と円卓の騎士」をもじっていることに英国人魂を見た。マシュー・ヴォーン、万歳!

 みなさん、よいお年を〜!!