現象の奥へ

【詩】「明月記」

「明月記」


頭上に残る白雪は、なぜか、南極に残された太郎次郎を思わせる。

内の殿上を許されるのが生涯最大の夢、

とは虚しき。

ウイルスはなお大暴れ、しかし、平家は壇ノ浦に消え、

テレビドラマは『鎌倉殿の十三人』。この、

13という数字、いかにもエンタメ意識数。

私は十五歳になったばかりの愛犬を亡くし、途方もなく、友に紹介された、

常寂光寺を訪れ、定家と出会い、ゆえに、

二代目の犬に定家と名づける。女子なれど。おそらく、

藤原どのは、殿上を許された日より日記をつける。

十八歳なり。七十にして、それを懐かしく

思い出す。

この空間は月明かりなり、そして時間は、

日記。