現象の奥へ

『スティルウォーター』──後味が悪い(★★★)

『スティルウォーター』(トム・マッカーシー監督、2021年、原題『STILLWATER』)

 

マット・デイモンは見ていて安心する演技をする役者なので、映画を選ぶ際の基準になる。本作もそういう期待で見たが、デイモンの演技は手堅いものであったが、脚本、演出が冗長であり、ポイントも途中でズレそうになって安定しなかった。魅力的な人物もおらず、ただ、アメリカのブルーカラー父さんが、殺人罪で捕まっている娘を助けるために、マルセイユに渡る。そこで、いかにも「おフランス的」状況に巻き込まれる。娘役は、『リトル・ミス・サンシャイン』のおしゃまな女の子を演じたアビゲイル・ブレスビンで、当時は、五歳くらいと思われたが、この映画では、20代前半といったところだろうか。流暢なフランス語といい、なかなかの演技派に成長している。

 しかしまー、なんというか、確かに、紋切り型ではなく、カタルシスもなく、現実というのは、こんなものだろうかと思わせる、貴重な作品となっているが、それだけでは映画としてよい点をあげるわけにはいかない。なにより、後味が悪いのである。