現象の奥へ

【詩】「adornoの『mahler』」

「adornoの『mahler』」

 

音楽にウルサイ、とてもウルサイ、アドルノが、マーラーについて書いている本は、

正直言って、なにが書いてあるかわからない。

ただマーラー交響曲は、ヴィスコンティの『ベニスに死す』や、

市川崑の『四十七人の刺客』のあいだを、

伝染病がはびこるベニスの街路や

大石内蔵助がさまよう、江戸の街を縫ってながれ、

観るものの脳裏へ棲みつくのを認めるだけだ。

C'est comme un mince rideau qui pendrait du ciel,

Râpé et opaque tout à la fois;

Un voile de nuages blancs produit sur des yeux sensibles

La même sensation douloureuse.

それは空に吊られた薄いカーテンのよう、薄いのに不透明で、

苦しみの感覚を眼にもたらすような白い雲のベール。

そう、そういう音楽だってあるんだよね、ランボーくん。


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