「地質学的な隠喩。」
井筒俊彦は高野山の記念日によばれて、講演をすることになった。
わたくしのような素人が、と、井筒はきりだし、そのうち、
しにふぃあんにおよんだ。
意味を超えたことばが、宇宙を包んでいるんです。
山の葉っぱのひとつひとつが声を発しているんです。
それがしにふぃあん。
その音声をいぬの散歩で聴いているのであるが、
わたしが思いうかべる山は、遠州のつらなる山というよりは、
しもじ小学校の運動場を囲む土手なのである。
私は広大なものにかんしんがないのか。
いつも、どちらかといえば、自分がなじんだ、
小さなものを想像してしまう。
「地質学的な隠喩。」これはオクタビオ・パスの、
レヴィ=ストロースについての本の章題の一部だ。