細田傳造詩集『まーめんじ』(栗売社、2022年3月刊)──細田傳造「現代詩」の迷路をゆく!
オクタビオ・パスによれば、「作品」とは、われわれの生きる自然に対して、おのれの何かを刻むことである。それが、木なら「彫刻」になるし、直接でないなら、頭に描いたこと、記憶などを、画布に描けば「絵画」になるし、言葉で表現すれば、「詩」や、「小説」になる。このことを思い出せてくれる、細田傳造の新境地である。これまでの詩集で、大きな賞の受賞や候補として注目を浴びながら、とくにそれを得意がったり誇示することなく、淡々と、詩の道を探ってきた。それが、本詩集によって、大きく結実した感がある。
十二からこっち
幾百もの腐った牛の肉を食い
幾百もの人間の汗のにおいを嗅いで
わたしの鼻は潰れた
にくしみの臭気を
かなしみの匂いをもはや知ることはない
「匂い」より
誰でもが経験できるわけではない、悲惨な状況を、細田は厳しく見つめるが、そこにあるのは、あくまでも明るい、生への讃歌である……ぬあんて書くと、また違ったものになってしまうが(笑)。
とにかく、傳ちゃんは、明るく、抜け目なく、シビアで、でもほんとうは暖かい。やさしさとは何か。それをじっと見つめて、認め、分析し、さらに受け止めることである。
これまで、思潮社、書肆山田と、出版社も変わってきたが、いま、このこじんまりとして手作り風の、栗売社が、傳ちゃんにはいちばんふさわしいような気がする。しかし、氏はここに留まらないだろう。さらなる出会いと探求を求めて、「八方美人」を続けるだろう。「現代詩」の迷路を、傳ちゃん節で進むだろう。まー、迷子になってる感はあるけどね(笑)。