「アサノ殿の47人、その1」
大石内蔵助良雄。
家老。
千五百石。
戒名、忠誠院刃空浄剣居士、行年四五歳。
あの事件が起こらなかったら、名前を残すこともなく、田舎の城の家老で終わった。
しかし、この世には、復讐だけが人生だという、
たったひとつの復讐もある。
京の山科に潜んで家庭菜園をしていた日々は、
思えば、人生最大の幸せな日々だったと言える。
それから、おのれの性格には合わぬ、
女遊びで、女の肌のぬくもりを知った。
妻子を里に帰し、遊里から江戸へ。
そこで、私は刺客になった。
隅田川にネギが流れていくのをみて。