現象の奥へ

『ユーラシアニズム』

『ユーラシアニズム─ロシア新ナショナリズムの台頭』(チャールズ・クローバー著、越智道雄訳、2016年、NHK出版刊)

 

座右の書といってもいい書であるが、読んでも読んでもぬかるみにはまっていく。いま、まさに、この本のとおりに、というより、この本の「懸念」をはるかに超えて、世界は混沌としてきた。本書には、ロシア思想の根幹が詳述されているにもかかわらず、まさにそれは迷路の見取り図にも似て、527ページの最終行には、ボルヘスの迷宮に関する言葉で終わっている。

プーチンがなにを考えているか知らないが、ロシア=世界と考える人々の「時間」のなかには、ヤルタ体制文化人類学者のヤーコブソンなども、突っ込まれている。読書は、そこから始まって、自分で思考することが大切であり、「オススメ〜」「泣いた〜」「すき〜」じゃ、なにもしていないの等しい。読書が、自分の頭を他人の書き物で埋めることになっては退化もいいところである。

六年前からプーチンについて考えているが、よー、わからんワ、このオッサンは(笑)。そして、ニューズウィーク日本版にプーチン特集があり、これも、おそらく(といって、実は傍らにあるのだが(笑))本書と同時期に出ている。

実は、本書のほかに、フレデリック・フォーサイスオデッサ・ファイル』、ベルナール・アンリ・レヴィ『人間の顔をした野蛮』、藤村信『ヤルタ─戦後史の起点』(すべて数十年前の本であるが)にも目を通したが、なんだかな〜、である。なにか「違う思考」、「もっと本質的な読書」が求められているようである。

ここでは、レヴィの本の写真でも「飾り」に揚げておくか。



f:id:palaceatene:20220414035711j:plain