現象の奥へ

【ソシュールより始めよ】

ソシュールより始めよ】

 

知られているように、フェルディナン・ドゥ・ソシュールには著書がない。死後流通している著書は、彼の生徒のノートから成り、それらのノートは幾人かのもので、なかでもいちばん詳細で厳密なノートが中心となり、他のもので補われている。

ソシュールの考えの核は、だいたい理解されており、それは、言葉(ラング)にはいくつかの「面」があるということだ。「音」を中心に考えれば、シニフィアンとなり、「意味」を中心に考えればシニフィエとなる。そして、それらは、空海フロイトなどとつながっていく。ゆえに、ソシュールなくしては、空海の研究も無意味なのであり、また、精神分析も、言葉によって行われるので、厳密に言葉(ラングとパロール)の研究なくしては、意味をなさない。フロイトなどの解説本を読んだだけで、フロイトについてなにか知った気になり、大いばりで解説しているバカを見かけるが、さあ、どーしたものでしょう。言語が違えば、見た夢の解説の意味も違ってくる。これに気づいたのは、ビンズワンガーである。そして、私は、もしかして、数学の超難解な「問題」と言われる「ABC予想」は、ソシュールの言葉に対する理論と似ているのではないか、と漠然と想像した。