現象の奥へ

峯澤典子詩集『微熱期』(2022/6/15、思潮社刊)

 『微熱期 』(峯澤典子著、2022年6月15 日、思潮社刊)──祈りのような言葉

 

このような詩編をも生み出さすことができず、癒やされずに、世の中でわめき散らしている老人も詩人も子供も少女も多い。固有名詞を持たないのか、それらを排除して、抽象的な薄っぺらな現時を書き続ける詩人の内面は果たしてどうなっているのだろうか? この著者にはそういう迷いも悲劇も無縁で、ただ頼りなげな記憶、感覚を頼りに言葉をつむぎ続ける。そう、窓を開けさえすれば、なにかがそっと「私」に触れてくれる。癒やされないあなたのために。祈りのような言葉たち。