現象の奥へ

「漱石、漱石と出会う」

漱石漱石と出会う」

漢詩の詩形は古詩と近体詩。
古詩は一句の中の韻律の形、
平声(ひょうしょう)の字と
仄声(そくしょう)の字配置が自由、長さも自由。
近体詩は、平仄の配置に定型があり従うのが礼儀。
長さも、八行は律詩、四行は絶句。
文科二年の漱石はきちんと守って七言絶句を書いた。
石苔沐雨滑難攀
夏の雨、濡れた紅葉。
他の旧友が和歌を作って遊んだところ。
和歌など面はゆいと感じた漱石は、
色香漂わぬ漢詩を書いた。
形はすべて中国の伝統を守り、それは、
すでにして文学者としての矜持であったかもしれない。