現象の奥へ

【詩】「驟雨」

「驟雨」

出会った時、すでに背負いきれないほどの苦悩を背負っていたふたり、
小林秀雄は書く。それは、
ドストエフスキーの『永遠の良人』の登場人物についてであるが、
これが、トルストイなら、もっと長々と事情を書くだろうと。
潔い構成。いかにも「現代的」であるが、ドストエフスキートルストイより七歳上である。
ウラジーミル・ナボコフは、ロシア散文小説家の一番はトルストイであると評価する。
ドストエフスキーは五番以内にも入らない。
それは、ロシア的美意識と、日本的美意識の違いかも知れない。
私は日本語が母語なので、
ついドストエフスキーを身近に感じ、
物語の邂逅に雨を降らせる。
それは驟雨でなければならない。
白く、暗く、激しく、悲しい。
しかし、救済がある。