現象の奥へ

舗道

「舗道」

思い出せないボードレールの一行があり、
朗読するミシェル・ピコリのしゃがれた声があり、
彼が通り過ぎていく舗道がある。
その下にはどんな革命が眠っていたのか。
ピコリの声はすでにすべてを諦めているような。
二度と訪れぬ街があり、
その街には思わせぶりな幾多の橋があり、
おお、かつては夢だったものが、
二度と読まれることのない
詩となって、わたしの限界を
誕生のときから祝している。
恋よ、散れ、ピコリの息の絶望の長さのように。
おお、向こうからやってくるのは、
ドストエフスキーという名のボードレールとは同年で、
異国の小説家ではないか。