現象の奥へ

R.I.P Godard

 

ゴダールキャメラを向ければレマン湖のほとりの平和な光景はあらゆる物語の舞台装置へと変容してしまう。──『ゴダールの決別』(蓮實重彥『映画狂人日記』P150)

 

原題『Hélas Pour Moi!』

日本語で言えば、

ああーなんてこった!

みたいなものか。まだ、

ドパルデューに、

色気のような片鱗が残っていた時代

いや、これ以上太りきれないほど太ったいま(といって、私はいまは、見ていないのだが)でも

色気をたたえているだろう

フランス男

そいつが湖のなかで

誰かを抱きかかえていた

ような

今となっては

記憶などどうでもよく

この俳優は最初

カフェ・テアトロに出ていたと思う

いつのまにか、

「たったひとりのブーム」と

『TIME』だったかで絶賛特集を組まれるほどになり、

Hélas! Hélas!

大スターになったのちも

誰だったかな、誰か大スターの葬式に

革ジャンにオートバイで来ていたっけ

フレンチ男ってやつは

そういうやつだ。あの、

マクロンにしたってな。

それで、水の滴る女を水の中で抱き上げていったけな

レマン湖で。

神と寝てしまった女とか

そういうハナシだったかな

問題は景色ではなく

視線

いまは、熱海の崖のプラスチック片が含まれていたという

盛土

その下は深くえぐれていた

谷、

ささやかな湧き水があったという

その三角形に眼がいく

Hélas! Hélas!

埋め立てられたものは

視線!