現象の奥へ

【詩】「ナチ」

「ナチ」

ナチが悪であることは誰もが知っている。

しかし、ナチは一種の思想集団であり、人物そのものではない。その「思想」が裁かれる。
どのような「思想」か。

それは、ハンナ・アーレントが、エルサレムで、元ナチの秘密警察の長であり、多くのユダヤ人を殲滅収容所に送り込んだアイヒマンの裁判を傍聴し、ニューヨーク・タイムズに傍聴記を書いたように、

「凡庸な人間でも罪を犯す」という言葉に表れるような「状況」でもない。

それは、そののちの、ニュルンベルク裁判で、新たに問われる概念、「人道に対する罪」を含む「思想」である。
いま、戦争が悪のように言われているが、
「人道に対する罪」は、人間を人間と思わない、武器を持ってすら戦いをしかけない。
ゴキブリを駆除するように、人間を「駆除」しようと考え、効率的に「駆除」する方法、殲滅収容所を発明した「思想」である。ゆえに、心の痛みも罪悪感もない。
東京裁判ニュルンベルク裁判がモデルであると言われる。
映画で見た、ヘッドフォンをつけた東条英機は、「死刑」と言われても表情ひとつ変えなかった。
人間という概念はやがて終わると、ミシェル・フーコーは書いている。