現象の奥へ

【詩】「ヘレナよ、」

「ヘレナよ、」

きみの髑髏(されこうべ)を、
なんの感慨もなく踏みつけていくやつがいて、
そいつを許したまえ。
時はそれほど長く流れたというわけではない、
我々は苦しい思いをしたが
美を勝ち取ったというわけではない。
地中のなかから突き上げる力が
建物を破壊し人を押しつぶした。
夥しい魂が迷子になってさまよっている。
ヘレナよ、
今こそよみがえって、
それらの魂を慰めよ、
かつてはトロイアと呼ばれ、
いまはトルコと呼ばれている
都市でさまよっている。