現象の奥へ

【詩】「パウル・ツェランに会えなくて」

パウル・ツェランに会えなくて」

閾から閾へ、パウル・ツェランを追ってみたが、
結局、会えなかった。
すでにして、彼はセーヌに身を投げていた。
浅そうに見えるセーヌも、溺死するほどに深いのか?
T.S.エリオットの男の愛人も水死して、
ベンヤミンは服毒自殺。
ついでに言えば、
ジル・ドゥルーズは、病室からの身投げ。
動けない体だったが、なんとか窓までは力を振り絞っていった。
もう生きていてもしかたない、こんな体で。
そして多くの人が死に、それでも生き延びているひともいる。
ドイツ、ドイツ語、嫌な言語。
それでも、読まねばならぬ本もある。
パウル・ツェランに会えなくても。