現象の奥へ

【天沢退二郎、没後すぐの著作『「道道」までの道道』(2023年5月20日、阿吽塾刊)】

天沢退二郎、没後すぐの著作『「道道」までの道道』(2023520日、阿吽塾刊)】

本書の出版を、生前の著者は「希望し、かつ満足していたのだろうか?」この、小学時代から十八歳ぐらいまでの「作品」を没後すぐに出版し、これがこの詩人の代表作、あるいは、死ぬまで考えていた作品であるのかと誰もが思うと思うが、どう考えても、天沢はこんなに天才だったんですと示したいように思える。なかに、出版した人たちの「解説」もあるが、はいそうですかと、思うほど、天沢退二郎という詩人は、ビートルズでもなければ、モーツァルトでもなければ、ダンテでもないと思うが。上にたまたまあげた芸術家でも、べつに、幼少期の天才性を示さなくても、死ぬまでの間には、彼らを大芸術家たらしめた作品群がある。天沢「程度」の詩人の偉大性を世に示したければ、まー、『譚海』を再版すべきであったと思う。私などは二十歳前後の頃、すごい詩人と思い込んでいたので、詩から離れても、ずーっとそうだと思っていたが、ネットにある「履歴」を見る限り、それほどでもなかった(笑)。それだけの詩人だった。そして、幼少時の「企画」がその後の詩作を左右するだけのものである(と思って、本書の企画はあったのだろうが)、読者をなめきっている。というか、見当違いも甚だしい。いかにグランポエット(ランボーとか)だろうと、幼少時の詩作品を集めたものは勘弁ねー、である。ただランボーに関しては、詩作していた時期が二十歳前後と短いし、「事件のような天才」なので、若き日の詩群を集めたものを出してもしょうがないと思うが。
 本著は、若き日の写真やメモもたくさん入れて、全集のような色合いも出しているが、かわいそうに、この本によって、「あの天沢」が、そのへんの詩がすきなジーサンになってしまったようである。帯など、その証左である(笑)。
 さすがの私もこんな本を買うほどスキモノではないが、奇特な方がご寄付くださったので、せっかくだから、以前にこの本の内容をAmazonで知って、気落ちした印象を書いておく。R.I.P

(こんな、思ったことを正直書くものだから、私はAmazonレビュー界から「出入り禁止」になっています(笑)。20年前はそんなことなかったんですが、最近、売り上げが落ちてきたのか、レビュー欄はあたりさわりのないものになっている。とくに本。本のほかに山ほどの雑貨や食品を買っているのにね。本は著者サイドがなんか一方的なクレームつけるんだろうね。まー、自分のサイトを持っているんで困ったことはないんですけどね。