現象の奥へ

【詩】「熊」

「熊」

イギリスには二種類の熊がいる。
プーとパディントン
プーはオハナシの森からやってきて、
人間と友だちになる。
パディントンは南米から荷物一つでやってきた。
主要駅から、東京の地下鉄よりひとまわり小さな丸っこい
チューブに乗り、
終点近くまでやってきた。
漱石も小説に書いている倫敦塔
をどうしても見たくて。
来てみると、なにやら熊が主役の祭典をしていた。
この金色の熊は、プーかパディントンか。
まだ少女の王女がギロチンにかけられた倫敦塔。
目隠しされた、彼女の震えがつたわってくる。
しかしギロチンは、いちばん痛くない死に方だという。
あ! と思った時には、向こうから、頭のない肉体を見ている
という寸法である。脳がなければ、痛みは感じない。
プーよ、パディントンよ、
日本では、「駆除」(それは、ナチスユダヤ人に対して使った言葉を思い出させる)したあとの大量の死骸の始末に困り、
一案として、「ジビエ」にする方法が試されている。
そろそろベジタリアンになってもいい頃合いだ。
それはともかく、
断頭台のキーホルダーでも土産物店で買って帰ろうか。